小さくて高コスパなモバイルスピーカーを探していたら、Ankerの小さなモバイルスピーカーにたどり着いた。これまでAnker製品を数多く使ってきた筆者が徹底レビューする。
Ankerのスピーカーとは?
Ankerはモバイルバッテリーや家電のイメージが強いかもしれないが、実はイヤフォンやヘッドホン、さらには小型スピーカーまでラインアップしている。オーディオ分野への参戦はかなり昔から行われており、オーディオ市場ではSONYやBOSEなどのハイブランドからJBLなどの中堅勢力に次ぐ新興勢力として存在感を増してきた。オーディオテクニカやJVCなどの国産勢力よりも売れているかもしれない。
今回はそんなAnker Soundcoreシリーズの中でも新たなナンバリングで発売されていたMotionシリーズ、「Anker Soundcore Motion 100」をレビューする。
Anker Soundcore Motion 100 のスペック
以下はAnker公式HPからの引用であるが、基本的な機能は全て備わった間違いのない構成となっている。特にLDAC対応な点は評価が高く、Android端末などホスト側でLDAC対応機器を持っている人はハイレゾ音源の再生が可能だ。特筆すべきはIPX7の防水性能だろう。アウトドア利用も視野に入れたモバイルスピーカーであるため、水中へ浸けても問題ない防水性能は心強い。
以下はスペック表にない機能の有無についてまとめた。気になる機能の対応関係について参考にしていただければ幸いだ。
機能 | 対応状況 |
サイズ | 約184 x 60 x 64mm |
重さ | 約590g |
オーディオ出力 | 20W (フルレンジ 10W × 2) |
防塵・防水規格 | IPX7 |
通信規格 | Bluetooth 5.3 |
対応コーデック | SBC / LDAC / MPEG2 AAC LC aptX関連、低遅延コーデックには非対応 |
再生可能時間 | 最大12時間 |
ステレオ再生 | 対応 |
2台接続によるさらなるステレオ化 | 対応 |
空間オーディオ | 非対応 |
通話 | 対応 |
Soundcoreアプリ | 対応 |
音声アシスタント | 非対応 |
マルチ接続 | 非対応 |
Bluetooth LE | 非対応 |
個人的には申し分ないスペックだが、マルチペアリングやBluetooth LE、音声アシスタントに対応しておらず、少々スペック不足といったところだ。後述するが、本製品はスマホから電源をリモートでオフにすることができる。しかし、スピーカー側がBluetooth LEに対応していないため、スピーカーの電源が切れた状態でスマホからオンにすることができない。リモートで電源を切ることはできるが、入れることはできないという少々もったいない仕様になっている。
Motionシリーズ全体に言えることだが、価格のわりに機能が少ないように感じてしまう。というのも、イヤホンやヘッドホンでは価格以上の機能が盛りだくさんだっただけに、価格なりのスペックになってしまったという印象だ。
外観を確認
ここからは製品の外装や内容物、スピーカーの外観についてみていこう。
外装をチェック!
外装はSoundcoreシリーズ独特のエンボス加工が施されており、質感、見た目ともに非常によい。かつての梱包でよく見られた「パッケージ+紙の箱」ではなく外装自体が段ボールとなっており、若干の重厚感を感じる。
手に取った第一印象は「思ったよりスリムだな」という感想だ。これまでのAnker製品は製品サイズに対する箱の大きさが所有感を満たしてくれていたが、この製品はスッキリまとまっている。
中身と製品外観をチェック!
ふたを開けるとビニールに包まれた本体が出てきた。こちらも最近のAnker製品あるあるで、2,3年前の過剰梱包感は感じなくなってきた。非常にシンプルで、これはこれでいいと思う。
画像では取り出し忘れているが、セット内容は本体、USB-A to Cケーブル、取扱説明書、保証書の4点だ。本体にはストラップが側面に1つ付いており、かばんやフックなどにかけられるようになっている。500mlペットボトルと同等のサイズ感、重量感だ。
第一印象はその高級感だ。取り出したときの質感、重量感は最高である。
本体の表面には恐らくランダムに散りばめられた青い斑点が施されており、非常にかわいい。ごつごつしたメタリックなテクスチャとは裏腹に、ポップな雰囲気をちりばめられたことで「小型なモバイルアクティブスピーカー」という製品コンセプトに沿っているようだ。
トップ面のボタンは左から電源、ペアリングボタン、ボリュームダウン、BASSモード(上)、再生ボタン(下)、ボリュームアップキーとなっている。完全防水を達成するためか厚めのシリコンで覆われており、ボタンは若干押しにくい。
電源を入れるとボタンが光る。暗闇でもハッキリ見えるのでありがたい仕様だ。この機能自体はOFFにすることもできるので、選択肢があるのはよい。
背面は低音を出すためのスリットが入っており、ここから低音が出てくる。ただしJBLやSONYのモバイルスピーカーのように独立した振動版が備わっているわけではないので、痺れるような低音は期待しないほうがよい。
左右側面にはストラップとUSB-C端子が備わっており、使いながらの充電が可能だ。散りばめられた青い斑点は上面だけでなく側面から底面まで全体に渡っており、底面には技適マークや仕様について書かれている。ゴム足が4つ付いており、テーブルに振動が伝わったり滑り防止に役立つようになっていた。
総じて全体的にスッキリまとまっており、他社スピーカーによくある側面/背面のウーファーもないため設置しやすい。20Wスピーカーというだけあってメッシュの隙間から見えるスピーカーも大きく、質感、重厚感共に非常に良い。
本体とアプリの操作感は?
ここからは本体の操作に加え、アプリでのカスタマイズや肝心の本体操作についてみていこう。
本体の操作感はどう?
本体のボタンは大きく、ボタン自体も発光しているため押しやすい。電源系統と操作系統が独立しているのがGoodだ。ただし電源ボタンは非常に押しにくい。押している感覚がなく、初めて電源を入れるときは壊れているのかそういうものなのかわからないレベルであった。購入前に他のレビュー記事にも同様の指摘はいくつか存在しているため、Motion100の持病である。対応している操作に対し6ボタンしかないため、アクションとその挙動についてまとめておいた。
ボタン | 操作 | 挙動 |
電源ボタン | 1度押し | 電源ON |
2秒以上の長押し | 電源OFF | |
Bluetoothボタン | 1度押し | ペアリング待機 |
マイナスボタン | 1度押し | 音量ダウン |
プラスボタン | 1度押し | 音量アップ |
Bassボタン | 1度押し | 低音強化ON/OFF |
再生ボタン | 1度押し | 停止/再生 |
ダブルクリック | 曲のスキップ |
1つのボタンが複数の操作を担うことも多く、この辺りは使いづらい。ボタン数が少ないことで操作自体が制限されるよりも複数タップで使えるため、ないよりはあるほうがいいという選択ができる点は選択肢を増やしてくれてありがとうといったところだ。
Bassボタンはワンタップで低音ブーストモードに切り替えることができるキーだ。中高音メインのチューニングから、全体のバランスを取ったような音質に変化する。音質についての詳細は後述したいが、Bassボタンはそういったキーだ。
アプリによる操作を解説
まずはAnker公式サイトの下部からSoundCoreアプリをインストールし、端末とスピーカーをBluetooth接続する必要がある。一般的にはAndroid/iOSともに設定からペアリングしなければならないが、AndroidにおいてはGoogleのFastPairに対応していたようだ。初めてスピーカーの電源を入れるとスマートフォン側にポップアップが表示され、簡単にペアリングできた。
電源を入れるとスマートフォン側にポップアップが表示され、「接続」をタップすることでペアリングできる。ペアリングが完了すると「完了」「セットアップ」の二択が表示され、完了を押すと特に何も起きず、セットアップを押すとSoundcoreアプリに遷移される。
Soundcoreアプリに遷移すると自動的に検出され、セットアップが可能だ。イコライザーやBassモードとの切り替えが行える。Motion100でLDACを使用するためにはアプリ側で本体をアップデートし、LDACのパッケージをインストールしなければならない。右上の歯車アイコンをタップし、LDACの有効化をするとよいだろう。
詳細は割愛するが、アプリを使ってボタンの明るさを調整したり起動音をオフにしたりすることができる。このように直感的な操作が可能ではあるが、マルチペアリングや音声アシスタントの機能がないため、Libertyシリーズなどに比べると設定できる項目は少ない印象である。
ファームウェアの更新には2,3分を要する。スマホ側にダウンロードし、スピーカーにBluetoothで転送するようだ。
気になる音質は?
今回はGalaxy S23 UltraにLDACで接続し、Amazon Prime Musicでハイレゾ音源を再生し検証した。開封直後とエージング後の音質を比べ、音質についての所感を述べていこう。
エージング前
エージング前であるか否かに関わらず厚みのある音になっており、特に中高域の伸びが良い。若干高音が耳に刺さるような気はあるが、このあたりはエージングや時間経過で収まっていく範囲であろう。低音域については独立した振動版を搭載した大きなアクティブスピーカーより劣るが、20Wという大口径スピーカーの良さを存分に活かした音質となっている。
ホワイトノイズなどはほとんどなく、ハイレゾ音源を再生しても奥で弾かれているギターや木琴などの繊細な音がスッと聞こえてきた。イヤホンやヘットフォンで聴くハイレゾ音源はそのままに、音圧、音場をぐっと広げた感じである。これまでPCモニタについていた2Wx2のスピーカーで満足していたので、大幅なスケールアップとなってしまった。
エージング後はどう?実際エージングは必要?
皆さんはエージングをご存じだろうか。エージングとはスピーカーやヘットフォンで行ういわば「慣らし運転」のことで、ピンクノイズなどの特定周波を流すことで部品同士の接着や振動版の滑らかな追従を可能にする手順のことだ。エージングには必要派、不要派も存在し議論を巻き起こす存在だが、一般的には行った方が高音質になるとされている。
ただしエージングは大音量、長時間、全てのスピーカーでやるべきものではなく、木製のコーン製スピーカーなどは行っても意味がない。エージングでマイナスになることはないので基本的には行ってよいが、意味があるかどうかは各自調べてみてほしい。
今回はAmazon Prime Musicで配信されていた「音と科学 エージング音Ch」というチャンネルの「Ver.UP! ヘッドホンの性能を限界まで引上げるエージング音 Ver.2 | Best headphones Burn-in Audio Ver.2」という音源を数時間再生させた。ハイレゾ音源にも対応しているため、YouTubeの低ビットレート音源よりは意味があるだろう。
同様の動画はYouTubeでも配信されていたので、Amazon Musicに課金していないよという人はぜひYouTubeで流してみるとよい。
エージングは非常に奥深いものであるが、今回の音源は幅広い音域、正確なタップを刻める音源となっており、短時間の再生でも効果を感じられたように思う。
エージング自体は音源に関わらず多様な音楽を再生することでなじんでいくため、単純に再生時間が伸びればエージングを行ったと定義することができる。今回は実際の音楽再生も含め50hを超える時間の再生を行ったため、十分なエージングとなった。実際にエージング後の音源を聴き比べると高音の刺さる感じや低音の籠ったような音質は改善され、明瞭になっておりスピーカーの全体的なバランスが整っていく感覚だ。
音質まとめ
音質について、特筆すべき点を箇条書きでまとめておく。
・20Wの大型スピーカーとしてそこそこ大音量にもなり、低音、高音のバランスが良い。
・LDAC対応もあり、正面に立つと繊細な音までよく聴こえてくる。音質はGood!
・震えるような低音を期待すると少々物足りない。
防水の持ち運びアクティブスピーカーに素晴らしい音質を求めるのはお門違いかもしれないが、防水スピーカー独特の籠った音質もなく、非常にclearで明瞭だ。ほとんどの人にとってベストバイなスピーカーだろう。
まとめ
コンパクトなアクティブスピーカーとしては音量、音質ともに上位に食い込むクオリティだ。グリルのガンメタとは裏腹に、ポップな模様も施されており男女問わず持ち運べる。サイズ感、機能性、アプリとの連携など全方面で使い勝手が良いので、ぜひお勧めしたい。